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プリント基板の表面実装に用いられる抵抗器の種類とは?抵抗値やサイズの読み方について2025.06.10

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プリント基板の表面実装に用いられる抵抗器の種類とは?抵抗値やサイズの読み方について

回路内の電流調整や動作制御をおこなう抵抗器は、プリント基板の製造においても欠かせない電子部品の一つです。角形チップ抵抗器の構造

プリント基板の表面実装に用いられるチップ抵抗器は、(1)「薄膜抵抗器」(2)「厚膜抵抗器」(3)「金属板抵抗器」があり、目的に応じて選ばれています。

チップ抵抗器の種類と概略形状
(1)薄膜抵抗器
薄膜抵抗器

(2)厚膜抵抗器
厚膜抵抗器

(3)金属板抵抗器
金属板抵抗器

この記事では、表面実装に用いられる抵抗器の種類や実装時の流れ、抵抗値の読み方について解説します。また、抵抗器の抵抗値やサイズの見方もご紹介します。

プリント基板の製造に欠かせない抵抗器とは?

抵抗器とは、電気の流れに対して抵抗を加えることで、回路の動作を安定させる電子部品です。電気の流れを制限したり、電圧を調整したりすることで、電子回路の動作を安定に保つ機能があります。水道に例えるなら、水の流れを調整するバルブのような存在です。具体的には、抵抗器の内部で電気の流れを制限することで、回路に流れる電流の量をコントロールしています。

抵抗器の基本原理は、「オームの法則」で示すことができます。この法則は、電圧、電流、抵抗の間に成り立つ関係を示します。式で表すと「電圧(V)= 電流(I)× 抵抗(R)[Ω]」となります。この式から「1Vの電圧で、1Aの電流を流す抵抗値が1Ω」ということが分かります。

また、オームの法則は、図で考えると覚えやすいです。

オームの法則の図

図の「V」(電圧)のところが触覚にも見えます。そのため、てんとう虫の図と呼ばれることもあります。図で考えると覚えやすいというのは、例えば、V(電圧)を求めたいときは、図のVを手で隠します。そうすると、I(電流)とR(抵抗)が残り、V=IRということが分かります。

また、R(抵抗)を求めたいなら、同じように図のRを手で隠します。すると、R=V/Iであることが分かります。同様にIを隠すと、I=V/Rであると分かります。

オームの法則から、電圧が一定の場合、分母の抵抗が大きくなるほど電流は小さくなるということがわかります(I=V/R)。反対に分母の抵抗が小さくなるほど、電流は大きくなります。

電流が抵抗を通過するときにエネルギーが消費されます。つまり、抵抗は電流の流れを制限して電圧を降下させます。電流は電子の流れを表し、電圧は電子の流れを推進する力を示します。抵抗は電流を減少させ、電子の流れを制約します。オームの法則から、電圧が電流と抵抗に比例することがわかります。

チップ抵抗器とは?

抵抗器のなかでも、プリント基板の表面実装に最適化させたものがチップ抵抗器です。

「チップ部品」とは、プリント基板に電子部品を実装するSMT(Surface Mount Technology / 表面実装技術)向けの小型の部品のことを指します。チップ抵抗器もチップ部品の一種であり、「SMD(Surface Mount Device)抵抗器」とも呼ばれています。

抵抗器には複数の種類があり、用途や目的に応じて使い分けられています。リード線付きの抵抗器は電力用、高電圧用など特殊用途で需要が残っていますが、汎用抵抗器に占めるチップ抵抗器の割合は2000年以降、9割前後になっています。

表面実装に最適化された「チップ抵抗器」と、プリント配線基板の貫通穴(スルーホール、ビア)に挿入実装する抵抗器の形状の違いは、端子電極にリード線がなく、外部電極とボンディングできる処理がされていることです。また、チップ抵抗器の小型・薄型化の追求が進み、0603サイズ(0.6×0.3mm)から0402サイズ(0.4×0.2mm)の需要が伸びています。

多機能化が年々進むスマホやタブレットは、端末内部の高密度実装化が一段と強まっており、そのためにも小型・薄型のチップ抵抗器が欠かせません。

なお、プリント基板に部品を実装する方法は、SMTの他に先に触れた挿入実装(THT、Through Hole Technology / スルーホール技術)があります。

基板にスルーホール技術で実装される抵抗器

THTは、(1)電子部品のリード(電極)を基板のスルーホール(穴の内部が銅めっきされて電気伝導性を持つ)に差し込み、はんだで接合したり、(2)ドリルもしくはパンチングで基材に穴を開けただけのノンスルーホール(穴内部は銅めっきされておらず絶縁状態)に部品のリードを差し込み、基板表面のランドまたはパッドと呼ばれる銅箔が付いた部分とリードをはんだ付けする実装方法です。

一方、チップ抵抗器を含め、端子電極にリード線のないチップ部品は、THTでの実装では用いられません。

※一部、SMT用のリード形状のチップ部品もあります。例えば、リード形状がL字型のガルウィングタイプやJ字型のJリードタイプ、直線上のフラットリードタイプがあげられます。

ガルウィングタイプ
Jリードタイプ
フラットリードタイプ

関連記事:「表面実装技術のSMT。工程の流れと注意点を、動画、イラストを交えて紹介

プリント基板の表面実装に用いられるチップ抵抗器の種類

プリント基板の表面実装に使われるチップ抵抗器は主に3つの種類に分かれます。

薄膜抵抗器

薄膜抵抗器

薄膜抵抗器は、抵抗体材料に「ニクロム」をはじめとする金属薄膜を使用しています。ニクロムは、ニッケルとクロムを主成分とする合金で、電気を通しにくい(電気抵抗が大きい)特性があります。

薄膜抵抗器の厚みは数10nm(ナノメートル)〜数100nmです。後に紹介する厚膜抵抗器の厚さ数10μm(マイクロメートル)と比べて薄いので、厚膜に対して薄膜抵抗器と呼びます。薄膜抵抗器の構造は、リード線付きのカーボン抵抗器(炭素皮膜抵抗器)と同様です。

薄膜抵抗器は、厚膜抵抗器に比べて抵抗値のばらつきを示す抵抗値許容差や、温度変化による内部の抵抗値の変動の割合を示す抵抗温度係数(T.C.R.)が小さく、耐久性やはんだ耐熱、耐湿性の高さなど長期安定性に優れています。抵抗温度係数は特に、厚膜抵抗器が±25〜±50に対して薄膜抵抗器は±5〜±100と小さく、抵抗値が安定しています。また、抵抗に電流が流れた際に発生する電流雑音も小さく抑えられます(低電流雑音)。

以上の特性から、薄膜抵抗器は精度が求められる回路で目的や用途を特定して限定的に使用されることが多く、汎用回路では、厚膜抵抗器が使用されています。

厚膜抵抗器

厚膜抵抗器

厚膜抵抗器は、汎用性が高く、もっとも広く使用されているタイプです。抵抗体には、金属とガラスの混合体であるメタルグレースが使われています。

厚膜抵抗器の皮膜の厚さは数μm(マイクロメートル)程です。薄膜抵抗器の皮膜の厚さ数10nm(ナノメートル)〜に対する厚膜抵抗器の皮膜の厚みが「厚膜」と呼ばれる理由です。厚い皮膜は、電子機器を損傷する電圧の急激な上昇(サージ)や、繰り返し発生する電気信号(パルス)に強い耐性を持っており、短期間の過剰な電流や電圧の影響を抑えることができます。

また、高抵抗領域でも抵抗値の経時変化が少ないため、高い信頼性を誇ります。さらに、耐腐食性にも優れた特性を持ちます。

角形チップ固定抵抗器

角形チップ固定抵抗器は、厚膜のメタルグレーズ皮膜と薄膜の金属皮膜に大別でき、量的生産の中心は厚膜タイプです。厚膜タイプは装着性、耐環境性に優れた部品です。一方の薄膜タイプは、抵抗値許容差や抵抗温度係数、電流雑音がいずれも小さいという特長があります。

金属板抵抗器

金属板抵抗器

金属板抵抗器は、金属板を抵抗体として使用したタイプで、低抵抗に特化している点が特徴です。なかには、1mΩ(ミリオーム)以下の非常に小さな抵抗値を持つ製品もあり、電力損失を最小限に抑えることが可能です。

主に過電流の検出や電流管理のために用いられています。ただし、厚膜型や薄膜型に比べて価格が高いのが難点です。

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チップ抵抗器を表面実装する流れとは?

弊社(アドガワエレクトロニクス)では、以下の方法でチップ抵抗器などの電子部品をプリント基板に実装しています。
SMTの全体工程図

①クリームはんだを塗る

専用装置を用いてペースト状の導電性物質であるクリームはんだを基板上に印刷(塗布)します。工程の流れとしては、最初に基板にメタルマスク(金属板)を重ねます。

以下の写真を見てもわかる通り、メタルマスクには、はんだを塗布すべき位置に対応した穴が開けられています。
金属板(メタルマスク)

次に、メタルマスクの上にはんだをのせて、スキージと呼ばれるへらを使って、マスクの開口部にクリームはんだを流し込むようにします。

クリームはんだの工程

クリームはんだの工程の図解

上記の図のようにメタルマスクを使用することで、基板上の必要な部分にだけクリームはんだを印刷(塗布)することが可能になります。はんだが印刷された部分には、後の工程で、チップ抵抗器などの表面実装部品が実装(搭載)されます。

チップ部品の実装機

なお、クリームはんだは、細かい粒子状のはんだとフラックスなどを混合して作られたもので、「ソルダーペースト」または「はんだペースト」と呼ばれることもあります。

関連記事:「プリント基板に使うフラックスの役割とは?はんだ付け促進の仕組みについて

②ボンドを塗布する

ボンド(接着剤)を塗布する目的は、実装精度を向上させるためです。以下の写真のような赤褐色のボンドを、実装する部品の位置(ロケーション)に打ち、後の工程で部品を実装します。

ボンド塗布の工程

チップ部品をボンドで固定することで、例えば両面プリント基板のリフロー工程において、部品の落下やズレ、浮き上がりを防ぐことができ、高精度な実装を実現します。

③抵抗器などのチップ部品の実装

表面実装機(チップマウンター)を用いて、プリント基板上の所定の位置に、チップ抵抗器などの電子部品を正確に搭載する工程です。あらかじめ、マウンターにはチップ部品の種類、搭載位置、搭載方向などの情報がプログラムされています。

表面実装機(チップマウンター)で実装する工程

作業時には、リール状のチップ部品をカセットにセットします。その状態で装置を起動することで、正確かつ高速に自動で部品が実装されます。

表面実装機で搭載するチップ部品

チップ部品をセットするカセット

表面実装機にセットされたカセット

部品を搭載する際の位置補正には、カメラによる画像認証技術が活用されています。カメラが位置のずれを検出し、自動で補正する機能により、手作業に比べて高精度かつ高速な実装が可能になります。

部品搭載時の位置補正

④リフロー炉で加熱する

リフロー炉と呼ばれる装置を使用して基板上にチップ部品をはんだ付けする工程です。最初にリフロー炉内で加熱してクリームはんだを溶かし、基板とチップ部品を馴染ませます。その後、冷却することで、チップ部品が基板にしっかりと固定されます。

リフロー炉で加熱する工程

リフロー炉の設備

ボンドを塗布している場合は、リフロー炉内で加熱することにより、ボンドが硬化します。ただし、クリームはんだが溶ける温度とボンドの硬化温度はそれぞれ異なるため、温度調整を図り、基板や部品にかかる負荷が最小限になるよう配慮します。

関連記事:「事前準備、道具選び、部品知識 ……。表面実装のはんだ付けで失敗しないコツ

チップ抵抗器の抵抗値の読み方

表面実装に用いられるチップ抵抗器の抵抗値は3桁もしくは4桁の数字で表されており、一定のルールで読むことが可能です。

この項目では、抵抗値の読み方について解説します。

数字3桁が表示されている場合

まずは、チップ抵抗器の表示が、以下のように数字3桁で表されている場合をご紹介します。

122

数字の左端「1」と、真ん中「2」が有効数字、右端「2」は乗数(10の何乗か)を表します。つまり、抵抗値は「12×10²=1,200Ω(1.2kΩ)」となります。

102

上記の場合は、数字の左端「1」と真ん中「0」が有効数字、右端「2」は乗数なので、抵抗値は「10×10²=1,000Ω(1kΩ)」です。

数字4桁が表示されている場合

つづいて、数字4桁が表示されている場合についても見ていきましょう。

1542

左端から右への数字「154」は有効数字、右端「2」が乗数を表します。つまり、抵抗値は「154×10²=15,400Ω(15.4kΩ)」となります。

RやLが表示されている場合

チップ抵抗器のなかには、数字だけでなく「R」や「L」といったアルファベットが使われているものがあります。このうち「R」は小数点の位置を表す記号です。また、「L」は小数点の位置とともに、単位がmΩであることを意味しています。

「R」が表示されている場合の例

1R5

この場合、「R」は小数点の位置を表すため、抵抗値は「1.5Ω」です。Rの箇所を小数点に置き換えるだけなので、理解しやすいでしょう。

「L」が表示されている場合の例

1L5

「L」が表記されている場合、小数点に置き換えるという点では「R」と同じです。ただし、単位はΩではなくmΩとなります。つまり「1L5」は「1.5mΩ」となります。

このように、アルファベットが使用されている場合は、小数点の位置と単位に注意します。

表面実装に用いられる抵抗器のサイズとは?

表面実装に用いられる抵抗器などのチップ部品のサイズには規格があり、サイズが大きくなるほど、定格電力も高くなります。

この項目では、チップ部品のサイズの見方について解説していきます。

抵抗器のサイズの読み方

チップ抵抗器の外形寸法の表記や呼称は、企業独自の呼び方や記号表記、mm(ミリメートル)、inchがあります。

例えば、「L寸法 0.4mm × W寸法 0.2mm」のチップサイズなら「0402」、「1005」なら「L寸法 1.0mm × W寸法 0.5mm」です。

・0402 …… L寸法 0.4mm × W寸法 0.2mm
・1005 …… L寸法 1.0mm × W寸法 0.5mm

日本ではミリメートル単位の表記が使用されていますが、念のため部品の仕様書を確認しておくと安心です。

「mm」か「inch」か。同サイズでも表記が異なるため注意

先に紹介した通り、チップ抵抗器の外形寸法の表記や呼称は、企業独自の呼び方や記号表記、mm(ミリメートル)、inchがあります。

ここでは、mmとinchの寸法互換表を紹介します。

サイズ(mm) mm inch
0.6mm × 0.3mm 0603 0201
1.0mm × 0.5mm 1005 0402
1.6mm × 0.8mm 1608 0603
2.0mm × 1.2mm 2012 0805
3.2mm × 1.6mm 3216 1206

このように、同じサイズの部品であってもmmかinchかによって表記が異なるため注意が必要です。

プリント基板の部品実装はアドガワエレクトロニクスへ

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アドガワエレクトロニクス(旧:安曇川電子工業)は、アートワーク設計された基板の機能を維持しつつ、量産時に不具合やコストアップを招かないよう変更提案を行うVA・VE提案が得意です。

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