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こんにちは。アドガワエレクトロニクスの公式ブログへようこそ。
「業務のスピードを上げようと頑張っているのに、なかなか残業が減らない」「納期短縮を求められるが、現場の余裕がない」— 。このような悩みを抱えていませんか?
生産性(仕事の質と速さ)を決定づける最大の要因は、作業そのもののスピードではなく「段取り(準備)の質」にあります。オフィスでのデスクワークはもちろん、製造現場においては段取りの出来不出来がそのまま「完成品の質・数量・リードタイム」として目に見える成果となって現れます。まさに「段取り八分、仕事二分」です。

本記事では、段取り改善によって生産性を向上させるための「3つの論点」を詳しく解説します。
・停止時間とリードタイムを削る「3つのアプローチ」
(外段取り化・小バッチ化・全体最適)
・微調整をゼロにする「シングル段取り」の達成手順
・品質不良を防ぐ「標準化(変化点対策)」と「浮いた時間の再配置」
「なぜ段取り替えに時間がかかるのか」という根本原因の掘り下げ(5Why分析)から、フォーミュラ1(F1)のタイヤ交換(ピットストップ)に学ぶ仕組み化、作業ミスを防ぐポカヨケまで、現場ですぐに使える具体的な手法を凝縮しました。貴社の現場改善・リードタイム短縮を進めるガイドとして、ぜひご活用ください。

目次
段取り(準備)の質は、製造現場はもちろん、事務所でのデスクワークにおいても生産性を大きく左右します。例えば事務作業でも、必要な資料やデータを事前に揃えておく「準備」のひと手間をかけるだけで、作業自体のスピードやミス率は激変します。
製造現場では、その準備の成否がそのまま「完成品の質・数量・リードタイム」として目に見える形になります。では、具体的にどのように段取りを最適化し、生産性を高めるべきでしょうか。ここでは3つのアプローチから解説します。

設備を停止して行う「内段取り」を、設備が稼働している間に進められる「外段取り」へと移行・移管することで、設備の停止時間を最小化できます。
▽ 内段取り(設備/停止中)の例:
電子部品をセットしたカセットの取り外し・取り付け、設備の試運転
▽ 外段取り(設備/稼働中)の例:
次に使う工具や材料の事前準備、治具の事前セッティング

設備が停止してから、次の工程の準備をしていては、業務時間中の設備の稼働時間が少なくなってしまいます。その結果、溢れた作業を、残業時間帯に充てることになります。設備の停止時間を削ることで、設備の実質的な稼働時間を増やすことが可能になります。
▽ 応用例:
朝一の立ち上げ待ちをゼロにする「始業前段取り」の仕組み化
外段取り(事前準備)の考え方は、日中の作業中だけでなく「始業前の設備状態」にもそのまま応用できます。
たとえば、基板実装ラインの「フローはんだ槽」や「リフロー炉」などは、常温から適正温度(はんだ槽であれば240〜260℃)に達するまで1〜2時間の予熱時間を要します。出社してから電源を入れていては、朝一番の生産ラインが1〜2時間ストップし、大きな稼働ロスが発生してしまいます。

これを解消するのが「タイマーによる自動予熱(始業前段取り)」ですが、単にタイマーを設置するだけでは「出社したのにハンダが溶けておらず、朝からラインが止まった」というトラブルを防ぎきれません。無人状態で設備を安全かつ確実に立ち上げるには、以下の3つの「隠れた事前段取り」を仕組み化しておく必要があります。

自動タイマーや日時データを制御するPLC(シーケンサー)内部のRTC(リアルタイムクロック)および保持用メモリは、バックアップ用リチウム電池によって電源オフ時も動作を維持しています。この電池が枯渇すると、夜間や休日に時刻データが初期化され、指定時刻になっても自動起動しなくなります(保持型レジスタや動作パラメータが消失するリスクもあります)。
▽ 制御手順の標準化:
メモリおよび時刻データのクリアを防ぐため、電池交換は「PLC本体に通電した状態で行う」手順を標準作業手順書(SOP)に明記します。
▽ 交換サイクルの運用基準:
メーカーの推奨寿命(周囲環境により2〜5年)に対し、電池切れリスクを未然に防ぐ安全配慮として「2〜3年周期での定期交換」を保全計画に組み込みます。
夜間の無人状態で通電されるため、制御機器の故障による過熱火災や、停電による停止リスクを構造的に排除しなければなりません。
▽ 停電補償対策:
瞬時停電や瞬時電圧低下、夜間の計画停電によってタイマー回路や時刻がリセットされないよう、内部バッテリーによる停電補償機能を備えたタイムスイッチまたはPLC回路を採用します。
▽ 過昇温防止の二重化:
メインの温度調節計(温調計)の故障だけでなく、ヒーターを駆動するSSR(無接点リレー)がショート破壊(ON状態で固着する現象)を起こすと、メイン制御が切れても加熱が止まらなくなります。
そのため、メイン回路とは物理的・電気的に独立した「過昇温防止器(ハイリミットサーモ)」を直列に配置します。前日退社時には温度設定やアラーム状態の点検(物理チェック)を標準化し、定期的な動作確認(トリップテスト)と合わせて安全装置が確実に機能する状態を維持します。
どれほど自動制御システムが正常に作動しても、現場の物理的条件が整っていなければ予熱は失敗します。
▽ ヒーター回路の導通確保:
タイマーによって電磁開閉器(主電源)が入っても、設備本体の個別ヒータースイッチがOFFになっていれば電流は流れません。
▽ 熱伝導率の維持:
はんだ表面に形成されるドロス(酸化物)は熱伝導率が著しく低いため、前日に清掃せず放置するとヒーターの熱が内部へ効率よく伝わらず、規定時間経過後も「表面だけ溶けて内部が固まっている」状態を引き起こします。
▽ 標準作業手順書(SOP)の運用:
退社時の「始業前準備チェックリスト」を運用し、前日のうちに「個別スイッチON確認」と「ドロス除去」を完了させておきます。
作業者の手を早く動かすことだけが段取り改善ではありません。設備が始業チャイムと同時に100%のパフォーマンスを出せる状態を、前日のバックヤードから作っておくことも、生産性を左右する重要な外段取りの一環です。
「ロットサイズ(一度の生産総量)」に対して、「バッチサイズ(一度に加工する量)」を細分化することで、製品全体の製造リードタイムを短縮できます。1個あたりの加工時間(プロセスタイム)が変わらなくても、まとめて流す量を減らすことで、工程前の待ち時間(キュータイム)やロット揃い待ち(ウェイトタイム)が削減されるためです。

数値で見る小バッチ化の効果
1個の加工に1分かかる製品を100個生産する場合
▽ 100個を一括で加工:
最初の1個が次工程に流れるまで「100分」かかる
▽ 20個ずつに小分割して加工:
最初の1個が次工程に流れるまで「20分」で済む
このように小バッチ化を行うことで、お客様へ製品を届けるまでのスピードが格段に上がります。また、万が一品質不具合が発生した際も、被害を最小限の数量に食い止められるメリットがあります。
ただし、小バッチ化には「段取り(セットアップ)回数が増える」というデメリットが存在します。何の対策もなしにバッチを小さくすると、段取り作業に追われ、かえって生産量が落ちてしまいます。
これを克服するために不可欠なのが、内段取りを10分未満に収める「シングル段取り」の推進と、段取り作業自体の標準化です。また、切り替え回数が増えることで作業ミスが起きやすくなるため、ポカヨケ(誤作動防止)などの品質対策もセットで進める必要があります。
さらに、お客様の要望に応じて分割出荷を行う場合は、出荷頻度の増加に伴う輸送コストや梱包の手間について、お客様・自社の双方にとって最適な条件となるよう事前に協議・調整しておくことが重要です。
シングル段取り(10分未満での段取り替え)の推進と標準化について、メカニズムや潜在的なリスクまで深掘りします。単に段取り作業スピードを早めるのではなく、「調整(Adjustment)という不確実な作業の全廃」と「変化点(切り替え時)の品質不具合防止」を両立させる構造を明らかにします。
▽ シングル段取り(SMED:Single-Minute Exchange of Die)
1桁(Single)分(9分59秒以内)で完了させる段取り替え手法
▽ 標準化・標準作業手順書(SOP:Standard Operating Procedure)
経験や技能を問わず、どの従業員がいつ行っても同じ品質・時間で作業を完了できるよう、最適な手順を定着させること
ある製造工程をイメージして、段取り時間が減らない根本原因を、「なぜ」を5回繰り返して掘り下げます。
段取り時間が減らない根本原因は ……
(1)なぜ?:
設備を止めた後の「位置調整」や「試運転」に大半の時間を費やしているから
(2)なぜ?:
設備を止めた後の「位置調整」で、一度で正しい位置が決まらず、目測や手感覚による微調整を繰り返しているから。その後に、ようやく試運転
(3)なぜ?:
金型や治具に明確な位置決め基準(ノックピンや目盛ストッパ)がなく、ネジ固定に依存しているから
(4)なぜ?:
設備や治具の設計段階で「段取り作業の容易さ(可変性)」が考慮されていなかったから
(5)なぜ?(根本原因):
過去の大ロット生産時代の思考から脱却できていないため(「設備を長く動かすこと」を重視し、「段取りの頻度が増えること」を前提とした設計思想がなかったこと)
シングル段取りの達成において最も重要なのは、作業者の「手の動きを早くする」ことではなく、「調整作業(Adjustment)の全廃」と「ワンタッチ化」です。
一般的な段取り作業の時間内訳は、「内段取り作業:約30%」「外段取り・準備:約20%」「微調整・試運転:約50%」と言われています。つまり、最も時間を消費しているのは「微調整」です。
・約 50 %:微調整・試運転
・約 30 %:内段取り
・約 20 %:外段取り
この調整作業を「位置決め(ノッチ[刻み目、切り込み、くぼみ]・ピン・目盛)」の仕組みに置き換えることで、微調整の時間が一気に削減されます。
フォーミュラ1(F1)の4本のタイヤ交換(ピットストップ)をわずか2秒〜3秒で終わらすには、ピットクルーの手の動きだけがいくら早くても無理です。そこには、「タイヤを事前に並べておく(外段取り)」「1つのホイールナットで一瞬で固定する(ワンタッチ化)」「全員の動線と役割がミリ単位で決まっている(標準化)」という仕組みがあるからです。
製造現場においては、以下の4段階の順序で改善を進めます。
→ 現状の可視化
改善として優先するのは、内段取り(設備を止めてからする段取り)の外段取り(設備が稼働している最中にする段取り)化です。内段取りを全て外段取りにするのは難しくとも、一部なら設備が稼働している最中にできる段取りもあるかもしれません。
設備稼働中にできる作業(材料・工具・治具・条件表の事前準備)と、設備を止めないとできない作業(金型脱着、洗浄)を書き出したり、写真・映像で撮影したりして、明確に分類します。

→ 停止時間の削減
従来、設備を止めてから行っていた「次回材料の搬入」「金型の予熱」「検査機のレイアウト変更」「寸法の事前測定」などを、設備稼働中にどうすれば終えられるか工夫します。

→ 構造の改革
内段取りと外段取りの厳密な分離が済んだ後、次のステップは残った内段取りのシングル化、標準化です。
従来のボルトの締結を「ボルト回し」から「ワンタッチクランプ(レバー式・カセット式)」に変えます。さらにスペーサや位置決めピンを導入し、手感覚による「微調整」をゼロにします。

→ 再現性の確保
成功した手順を標準作業手順書(SOP:Standard Operating Procedures)に落とし込み、誰が担当しても同じ9分59秒以内(シングル段取り)で安全に完了できる状態を作ります。

内段取り、外段取りを問わず、段取り作業の標準化は、単なる効率化だけでなく、製造現場の最大リスクである「変化点(3H:初めて・変更・久しぶり)による品質不具合」を防ぐ防壁として機能させなければなりません。
段取り替え直後は、条件設定ミス、ボルト締め忘れ、異物混入といった不具合が最も発生しやすいタイミングです。標準化が曖昧だと、熟練者の「勘」に頼ることになり、担当者が変わるたびに品質のばらつきや初期不具合(初品不良)を引き起こします。
標準化を定着させる具体的な仕掛けとして、以下の3点が挙げられます。
▽ 写真付き標準作業手順書
テキストだけの読み込まないと理解できないマニュアルを廃止し、正しい手元動作やポカヨケ(誤作動防止機構)の位置が直感的にわかる写真・動画ベースの標準作業手順書を作成します。

▽ 変化点チェックシートの義務化
段取り完了後、1個目の製品(初品)を加工した段階で、「条件値(温度・圧力等)の目視チェック」と「初回寸法測定」を標準プロセスの中に組み込みます。
▽ ポカヨケ(メカニカルな誤挿入防止)
向きが逆だとセットできない形状の治具(Poka-Yoke)を採用し、作業者が「間違えようのない」構造を作ります。
作業速度と製品品質を両立させる標準化があって初めて、段取り改善は持続可能なシステムとなります。
現場でよく見られる陥りやすい罠として、「段取り時間は短縮されたが、浮いた時間を作業者(または設備)が『手持ち(手空き)』にしてしまい、工場全体の生産量がまったく増えない」ということがあります。

段取り時間を削った後は、必ず「次工程のスケジュール最適化」や「余剰工数の別作業への再配置」まで設計しなければ、改善の効果は利益として現れません。

段取り替え時間を10分未満に短縮する「シングル段取り化」や、一度に加工する量を減らす「小バッチ化」を推進することは、工場全体のリードタイム短縮に直結する一方で、初期投資や運用上の新たな注意点も発生します。
取り組みを成功させるために、事前に把握しておくべき「得られる成果(メリット)」と「対策が必要な課題(デメリット)」は以下の通りです。
| 区分 | 項目 | 具体的な内容と影響 |
|---|---|---|
| メリット | 多品種短納期への対応力向上 | 段取り替えの負担が激減し、顧客からの急な小ロット指定や短納期要求に柔軟に対応可能となる。 |
| 仕掛品(中間在庫)の削減 | 小バッチ化が容易になり、工程間に溜まる在庫や工場内の保管スペースが削減され、キャッシュフローが改善する。 | |
| 実質的な設備稼働率の向上 | 設備を停止して行う「内段取り」が削られるため、実質的に設備を動かせる時間(可動率)が直接アップする。 | |
| デメリット | 設備・治具改修の初期投資 | ワンタッチクランプ化や位置決めピンの追加など、機構改善に伴う治具改造や設備投資費用が発生する。 |
| 切り替え増による不具合リスク | 段取り頻度が増えるため、標準化やポカヨケが不十分だと設定確認不足による初期不良(変化点リスク)が生じやすくなる。 | |
| スケジュール管理の複雑化 | 小ロット・多頻度での生産に移行するため、後工程への払い出しや現場の進捗管理が複雑化する。 |
本記事では、段取りの最適化がいかに仕事の質と速さを左右するか、そのメカニズムと具体的な推進手順を解説してきました。最後に、重要なポイント3つを振り返ります。
設備稼働中にできる「外段取り化」で設備の停止時間を削り、加工単位を小さくする「小バッチ化」で工程内の待ち時間(キュータイム)を減らす。
段取り時間の大半(約50%)を占めるのは「微調整」。作業者の手にスピードを求めるのではなく、位置決めピンやワンタッチクランプなどの「機構」を導入し、試運転や調整の手間をゼロにする。
切り替え頻度が増えることで高まる品質リスクは、「写真付き標準作業手順書(SOP)」や「ポカヨケ」で未然に防ぐ。さらに重要なのは、段取り短縮によって生まれた時間の「活用設計」。「次工程のスケジュール調整」や「別作業への人員再配置」まで落とし込んで初めて、工場全体の総生産量(スループット)が増加し、会社の利益につながる。

段取りの最適化は、単に「時間を短縮すること」自体がゴールではありません。真の目的は、段取りの仕組み化によって生まれた時間的・精神的な余裕を、さらなる品質向上や顧客対応力(短納期対応)へと還元することです。
まずは貴社の現場において、「設備が止まっている時間のうち、微調整に何分使っているか」を可視化することから始めてみてはいかがでしょうか。
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