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― この記事は、2025年7月11日に公開した内容に加筆修正したものです ―
こんにちは。アドガワエレクトロニクスです。ブログをご覧いただきましてありがとうございます。
この記事では、プリント基板を湿気や粉塵から保護するコーティングの役割や効果とともに、部品塗布専用治具を社内制作する意図と効果を紹介します。

目次
電子部品やプリント基板は、電子機器の心臓部といえる重要な構成要素です。狙った性能を発揮させるための、また、機能を維持するための構成要素であるからこそ、電子機器の使用環境や用途に応じた対策が必要です。その対策のひとつが、湿気や粉塵からプリント基板を保護するコーティングです。


電子部品やプリント基板は、湿気や粉塵から影響を受けやすく、湿気が付着することで腐食や漏電、絶縁劣化(不良)を引き起こしたり、粉塵が直接プリント基板に蓄積することによって熱放散を妨げ、機械的障害につながったりします。


たとえば、キッチン家電なら調理中の蒸気、洗い物から発生する湿気に晒されますし、浴室家電ならシャワーや入浴後の湿度の高い環境で使用する場面も想定できます。そんな使用環境や用途に応じて講じる対策のひとつがコーティングです。
コーティングは、電子部品を搭載したプリント基板の表面に保護膜を張るイメージで、湿気や塵、異物が直接プリント基板に付着するのを防ぐ役割があります。

また、産業や医療など特定の分野ではプリント基板が化学物質の影響を受けることがあります。化学物質はプリント基板の回路(金属銅のランド部分)を劣化させ、性能を低下させます。化学的な腐食を防ぎ、狙った性能を継続的に発揮させるためにもコーティング処理は、基板実装工程における付加価値のひとつです。

コーティングはさらに、湿気や粉塵、化学物質といった外部要因からプリント基板を保護する役割のほかに、回路間の絶縁を強化し、ショートや漏電のリスクを低減させる効果もあります。
電子機器(電気製品)の高性能化、小型化に伴い、その機器に組み込まれるプリント基板にも多層化、小型化が求められます。それもあって、プリント基板上に回路が密集するものもあります。
コーティングには、これら近接して配置された回路間の絶縁を強化し、ショートや漏電のリスクを低減させる効果があります。特に高電圧が流れる回路では、ショートや漏電のリスクを低減させるためにも絶縁性の確保が不可欠です。


当社の主事業は、プリント基板への電子部品の実装(搭載)、電気機械器具組立です。プリント基板への電子部品の実装(搭載)は自動化が進み、同業他社との差別化が図りにくく、参入障壁が低くなった一面があります。
一方で当社のように、プリント基板に搭載する電子部品の選定、調達から実装まで、さらにその先の電装品(電気関係の装置や配線)の取り付け、組み立てまでを、国内一拠点で一貫して提供することで、お客さまに付加価値を提供し、差別化を図る企業もあります。



電子部品が実装されたプリント基板への、コーティング処理の提案も当社がお客さまに提供できる付加価値のひとつです。コーティング処理のみの依頼から始まり、電子部品の実装工程と合わせた依頼に発展することもありますし、電子部品の実装工程のみの依頼に、コーティング処理を合わせて提案することもあります。
いずれもお客さまの需要を、一連のプリント基板実装工程に落とし込む際の提案力が欠かせないもので、それはプリント基板実装工程を一貫して提供してきた当社ならではの視点や強みです。


電子部品が実装されたプリント基板にコーティング処理を施す際は、プリント基板の特定の箇所にのみコーティング剤を塗布することがあります。それは、コーティング工程の作業時間(塗布、乾燥を含む)短縮のためでもあり、押しボタンやスイッチ、コネクタなどが実装された箇所への塗布を避けるためでもあります。

コーティング作業は、すべて自動化されているわけではなく、多品種小ロットの場合には手塗りで対応することがあります。自動化されたコーティング工程と手塗り工程の組み合わせで、製品の用途やコスト、納期に応じた効率的かつ柔軟な対応が可能です。

また、部分塗布に欠かせないのが専用の治具(じぐ)です。治具は、部品や工具、プリント基板がずれないように誘導、固定する補助工具のことです。作業に治具を用いることで、従業員による作業精度のバラつきを抑え、作業速度、効率の向上が見込めます。品質向上とともに、納品リードタイム短縮の提案にもつながります。
コーティング工程にも治具が欠かせません。たとえば、コーティング箇所のズレを防ぐ基板固定治具、部分塗布の精度と効率を上げるマスキング治具があります。当社はこの治具を、製品や作業工程に応じて社内で設計・制作しています。治具の内製化を図ることで、試作段階の調整の迅速化、柔軟性が実現でき、量産時における継続した改善やコスト圧縮も可能です。

ものづくりの現場に近い場所で仕事をしていると、できあがったものの美しさに、ときにわくわくすることがあります。美しさは、品質であったり、使い手のことを考え抜かれた設計であったり、必要最低限の部品数で狙った機能を叶える発想力や表現力、それをかたちにする実現力であったり。コーティングの精度と効率を上げるマスキング治具といった、一見地味に見えるものづくりにもそれは言えます。
電子部品が実装されて、高さにバラつきがあるプリント基板―。このプリント基板を複数枚固定し、かつ塗布禁止箇所にマスキング(コーティングしたい箇所にのみ、穴を開ける)する治具にも、治具を設計した従業員のこだわりがあります。

試作段階のものですが、たとえば、プリント基板を固定するフタと土台の素材選び、フタを上下間違えてかぶせない(かぶせられない)ポカヨケ、プリント基板の凹凸に配慮した切削深度などの思考の結果が見えます。
治具を見て感じた上記のことを品質保証部の部長に話すと、話した内容に同意したうえで、「彼(治具の設計者)は、頭のなかで描いた工夫、治具を使う作業者への配慮をものづくりに体現するセンス」があるとのこと。「センス」と言ってしまえば、生まれつき備わっているような先天的な性質や特長と捉えてしまいがちです。私は、「センス」を、物事(ものづくり)の微妙な感じ(機微)をさとる感覚(気づき)と行動力だと捉えました。
何かに気がついて直していたら、いつのまにか人よりも秀でたところができると思います。たとえば、気がつくから、自分に似合うもの、必要なものが選び取れるし、時代遅れにならずに今を生きられます。人や持ち物など、周りとのバランスを保ち、気がついたらすぐに行動する―。


たとえば、本を読んでいて、打ち合わせをしていてふと、知らないことばかりだな、と気がつけば、知らなかったこと、分からなかったことを調べたり、学んだりします。そういうちょっとした「気づき」と「行動」の積み重ねが、その人を作り、いつのまにか人よりも秀でたところ、先の部長が言うところの「センス」が作り上げられるのだと思います。

治具を設計し、制作するにしても今は3Dスキャナ型の3次元測定機や3Dプリンターといった設備があり、それらを使うと短時間で治具が仕上がります。一方で、便利さや使いこなせないような機能の数々を前にすると、道具(設備)に使われている感覚を抱くのも正直なところです。
それらの道具(設備)に、使う側の「センス」が加わって初めて、できあがったものの美しさに、ときにわくわくするのかもしれません。美しさは、品質であったり、使い手のことを考え抜かれた設計であったり、必要最低限の部品数で狙った機能を叶える発想力や表現力、それをかたちにする実現力であったりします。

アドガワエレクトロニクスは滋賀県高島市を拠点に、プリント基板・電子部品調達〜基板実装(表面実装、挿入実装)、コーティング、エージング試験、電気機械器具組立まで、関西・近畿一拠点・自社工場で一貫生産体制を整えています。このブログでは、アドガワエレクトロニクスが製造現場で培った技術や品質管理の取り組み、最新の業界動向をわかりやすく発信します。
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