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こんにちは。アドガワエレクトロニクスの公式ブログへようこそ。
本記事では、X線画像解析によるはんだ接合状態の可視化と、「はんだブリッジ」を防ぐ高精度印刷技術を解説します。プリント基板の実装品質向上や不具合の根本解決を目指す技術者・品質管理担当者様向けの内容です。
X線の透過率と密度の関係から「はんだボール」「ボイド」「はんだブリッジ」の識別方法を整理し、不具合が発生する物理的メカニズムを紐解きます。さらに、SMT工程の初期段階で不具合を防ぐため、「メタルマスク設計」「ペースト粘弾性の最適化」「印刷パラメーター制御」という3つの要素技術による根本解決手法をご紹介します。
目次
電子部品を実装したプリント基板をX線撮影すると、部品のリード端子部に影の濃淡が観察されます。

X線は物質を透過する性質を持ちますが、金属のように密度が高く原子番号が大きい物質を通ると吸収・遮蔽(しゃへい)されます。
そのため産業用装置などの「ポジ表示」の場合、検出器に届くX線量が少ない(遮蔽された)箇所は「黒く(暗く)」写り、基板樹脂や空気(ガス)のように密度が低い箇所はX線が通過するため「白く(明るく)」写ります。これは光の影絵と同じ見え方であり、金属内の微細な空隙(ボイド)を白いコントラストとして捉えやすいというメリットがあります。
こうしたX線検査の基本原理は、歯科医院や病院の「レントゲン」でも同様ですが、医療用画像は「ネガ表示(X線が遮蔽された骨が白、透過した空気が黒)」で表現される点が異なります。これはかつての銀塩フィルムの感光特性に由来する伝統的な表示形式です。

医療現場でレントゲンを受ける際、X線から体を守るための防護衣には鉛(原子番号 82)が用いられており、またレントゲン室(放射線診療室)の壁の中にも鉛が使われています。
・暗い(黒い)領域
はんだ接合部、部品リード、部品ボディ(金属の厚みと密度が最も高い場所)
・中間のグレー領域
基板の銅箔パターン、はんだが薄く濡れ広がっている箇所
・最も明るい(白い)領域
基板の樹脂部分、およびはんだ内部に発生した空気(ガス)の層
X線透過画像の影の濃淡を解析することで、外観観察では見えない基板実装の内部品質や不具合を正確に把握できます。

画像中央、部品の縁に接している濃い丸い影は「はんだボール」です。リフロー加熱時のプロファイル不適合によるはんだの飛散や、部品下から押し出されたはんだペーストが表面張力で丸く固まった金属塊です。金属密度が高いため、X線を強く遮蔽して濃い黒い影として写ります。
隣接するパターンやリード端子との距離が近い場合、あるいはリード間に挟まった場合、ショート(短絡)や絶縁不良の原因となります。

黒いはんだ接合部の中に点々と存在する明るい丸い影は「ボイド(空孔・気泡)」です。はんだ溶融時にフラックスが揮発して発生したガスが、外部へ逃げ切れずに内部へ閉じ込められた空洞です。
空洞内はガス(気体)であるためX線をそのまま透過し、周囲の金属部(はんだ付け箇所)より明るく写ります。このボイドの面積率が過大になると、電気・熱の導電性低下や機械的接合強度の低下をもたらします。
| 現象ラベル | X線画像での見え方 | 物理的発生メカニズム(Fact) | 主なリスク・影響 |
|---|---|---|---|
| はんだボール | 黒く濃い球状影 | 過熱飛散・押し出しによる表面張力での球状化 | 隣接パターンとの短絡・絶縁抵抗低下 |
| ボイド | 白く明るい円形影 | フラックス揮発ガスの閉じ込め (低密度=X線画像上では透過) |
放熱性低下・機械的接合強度の低下 |
| はんだブリッジ | 膜状の影 | 印刷時のダレ・滲み、 溶融時の表面張力による連結 |
通電時の短絡・部品破壊・発熱 |

画像中央右のリード端子間に、黒〜濃いグレーの影が膜を張るように連結しています。これは隣接する端子同士が意図せず導通してしまう「はんだブリッジ」です。
正常な実装状態であれば端子間にはんだは存在せず、基板樹脂が露出して「明るく(白い)」写ります。しかし、溶融したはんだが隣の端子にまで渡って固化しているため、X線が遮蔽されて暗い影として写っています。
電子組立品の受け入れ技術標準である「IPC-A-610」においても、意図しないパターン間の接触は一律で「不適合(Reject)」と判定されます。通電時の誤動作や過電流、IC等の部品破壊、発熱・発煙のリスクを引き起こすため、工程内での確実な抑止が求められます。
はんだブリッジは、以下の要素が相互に影響し合うことで発生します。
(1)基板ランド/パッドの設計パターン(幅やレジスト開口の不備)
(2)部品の配置精度(マウンターでの載せズレ・押し込み過多)
(3)部品リードの変形・歪み(共平面性[コプラナリティ]不良・ピン間距離不足)
※ 共平面性(コプラナリティ):複数の端子が同一平面上にどれだけ綺麗に揃っているかを表す品質指標
(4)はんだペーストの供給過多・印刷状態(立体形状の崩れ・横ダレ)
(5)はんだの切れ性・表面張力(加熱プロファイルやフラックス活性の不適合)
特にリフロー加熱前の「はんだペーストの印刷形状」が崩れ、横にダレて「潰れた饅頭型」になると、加熱(リフロー)前に隣接端子と物理的に接触・急接近し、溶融時に表面張力によって一気にブリッジへと進展します。
はんだブリッジの発生を根本から解決するには、表面実装工程(SMT)の最初期段階である「はんだ印刷工程」において、適正量かつ崩れのない角柱状のはんだペーストを供給することが極めて効果的なアプローチとなります。

はんだブリッジを防ぐ高精度印刷を実現するための解決策として、以下の3つの要素技術が挙げられます。
はんだペーストの版離れ特性(転写効率)を高め、余分なはんだ供給によるブリッジ、滲み、およびリフロー時のはんだボール発生を防ぐためにマスク設計を最適化します。業界標準規格(IPC-7525C)に基づき、以下の2つの幾何学的指標を満たす設計が求められます。
・アスペクト比(Aspect Ratio)
開口幅(W)/ マスク厚(T)。1.5以上が推奨。
・エリア比(Area Ratio)
開口底面積 / 側面積。0.66以上が推奨。
マスクの「開口幅に対する厚みの比率(アスペクト比:推奨1.5以上)」や「開口底面積に対する側面積の比率(エリア比:推奨0.66以上)」が不足すると、ペーストとマスク開口壁面間の摩擦力(せん断応力)が基板への付着力を上回り、はんだが開口内部に残着したり、版離れ時に引きずられて、はんだのダレや引きずりの原因となります。

対策例として
・開口率の縮小
開口サイズを適度に絞り込み(例:80〜90%)、はんだ供給過多による滲みを防止する。
・マスク厚とアスペクト比の調整
小型部品(0402チップ等)では一般的に0.08〜0.10mm厚が用いられますが、微細部品と大型部品の混載時には、アスペクト比・エリア比を両立する適切な厚みを選定する。
・壁面の平滑化・撥水処理
レーザー加工後の壁面粗さを平滑化(Ra 0.21〜0.22μm程度)したり、撥水・撥油コーティングを施すことで、壁面とのせん断応力を低減させてはんだのダレや引きずりを防ぐ。
印刷時や版離れ時の外力に応じて適切に粘性が変化する、チクソ性(せん断減粘性)に優れたペースト材料を選定する必要があります。

はんだペーストは一般的に、加わるせん断速度(流動の速さ)に応じて粘度が低下する性質(せん断減粘性)を持ちます。スキージングや版離れ時のように高いせん断速度がかかる場面では粘度が低下し、マスクからの抜け性が向上するとともに、印刷後に静止した状態では高い粘度を保ち、ペーストの横ダレや滲みを抑制します。
・チクソ性:時間経過とともに粘度が変化・回復する性質
・せん断減粘性:せん断速度(変形速度)の上昇に伴い粘度が低下する性質
はんだペーストの選定とともに、ペースト特性や部品ピッチに応じた適切な版離れ速度(基板下降速度)を設定することが不可欠です。
版離れ速度の高速化で角柱状のペースト形成:
版離れ速度が遅すぎると、ペーストがマスク壁面に引っ張られて糸を引くように伸びます。その結果、上面がソフトクリームのように円錐状に盛り上がってリフロー時に倒れてブリッジの原因となります。

使用するペーストの粘弾性特性や部品ピッチに応じて、版離れ速度(基板下降速度)を制御します。狭ピッチ実装では一般的に低速(0.1〜1.0mm/s)で静かに分離させますが、高チクソ性ペーストを使用する場合には、あえて適度な速度(5〜10mm/s)で離すことで生じる高いせん断力により、ペーストをシャープに破断させて角柱状の形状を保持させる手法も有効です。
・微細ピッチ・高精細実装
0.4mmピッチBGAや0402チップなどの微細パターンでは、一般的に0.1〜1.0mm/s の低速で版離れを行います。急激な引っ張りを避け、ペーストが周囲へ飛び散ったり糸を引いたりするリスクを最小限に抑えます。
・高チクソ性ペーストでの形状維持(高速破断コントロール)
降伏値が高く高せん断でシャープに切れる特殊ペーストを使用する場合、あえて 5〜10mm/s の高速で切り離す手法が有効です。ペースト上面がソフトクリーム状に伸びて倒れる現象を防ぎ、角の立った角柱状の印刷形状を形成させます。
スキージの印圧やアタック角度(標準例:60°)を厳密に管理します。過剰な印圧はペーストを開口部外へ押し潰し、メタルマスク裏面へはんだが滲み出る「スミア(スミアリング)」を発生させます。裏面スミアは次毎の印刷で基板へ付着し、ダイレクトにはんだブリッジの起因となります。
X線解析によって確認された「はんだブリッジ」は、単にはんだの量が多いことだけが原因ではなく、印刷直後のペーストの「立体形状の崩れ」や「転写時の引きずり」に起因して発生することが多くあります。
したがって、
・メタルマスクのアスペクト比・エリア比を遵守した開口設計
・チクソ性・せん断減粘性に優れたペーストの選定
・部品ピッチやペースト特性に合わせた版離れ速度・印圧の精密制御
という3つのアプローチを組み合わせることで、リフロー前段階でのペーストの滲み・ダレを抑え、ブリッジ不具合の真因究明および根本解決につながります。
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