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ウェーブ(フロー)はんだ付けの落とし穴。実装専門家が解説する「手直しを回避する」5つの視点2026.08.04

こんにちは。アドガワエレクトロニクスの公式ブログへようこそ。

ウェーブ(フロー)はんだ付けこそ、現場の「管理レベル」によって実装品質に著しい差が出る工程です。近年、プリント基板の多層化や高熱容量化が進み、はんだの熱引きやスルーホール充填といった条件管理の難易度は増しています。それにもかかわらず、同工程は「すでに確立された技術」と見なされ、過去の標準条件のまま油断されがちです。

その結果、適切な熱量供給やフラックス管理が行われず、スルーホールの充填不足やブリッジといった予期せぬ不具合が頻発し、現場では膨大な手直し(リワーク)コストが発生しています。時代の変化に合わせた高度な条件設定とプロセス管理を徹底して初めて、安定したフロー実装品質が実現します。

 

 

本記事では、ブリッジや未はんだ、ブローホールといった現場のトラブルを根本から回避し、後工程の手直しコストをゼロに近づけるための「5つの品質管理アプローチ」を実装専門家の視点から詳しく解説します。

IPC規格が定める「垂直充填率」の正確な数値管理から、水蒸気爆発を防ぐベーキングの温度最適化、断面観察による不具合の因果鎖断ち、わずか1.6mmの差が品質を左右する「はんだ噴流高さ」の定量制御、そして不良の発生を極限まで抑える「部品配置・パターン設計」まで、現場の直行率と製品の長期信頼性を高める実践的なノウハウを凝縮しました。

開発・設計担当者様から品質保証・製造現場の皆様まで、品質改善の参考としてぜひご活用ください。

 
 

目次

はじめに:なぜ今、ウェーブはんだ付けの再検証が必要なのか?

 

電子部品実装の現場において、ウェーブ(フロー)はんだ付けは「確立された技術」と見なされがちです。しかし、実装専門家から言えば、これほど現場の管理レベルによって実装品質に差が現れる工程はありません。

当社が取り扱うプリント基板は、多層化や大電流化と放熱の要請による銅箔厚の増大により、熱容量が増加しています。設計段階のわずかな配慮不足が、製造現場ではブリッジや未はんだといった致命的な欠陥を招き、結果として膨大な手直し(リワーク)コストを発生させます。

製造現場で発生する不具合の手直し(リワーク)コストは、予防的な品質管理コストの数倍から数十倍に膨らみます。本記事では、IPC規格や現場の物理現象を紐解きながら、直行率を向上させる5つの視点を提示します。

 

 
 

視点 1:IPC信頼性クラスの境界線「垂直充填率」の正確な数値管理

 

1. 垂直充填率(バレル充填率)とは何か?

はんだ付けの外観品質基準として広く採用されている「IPC-A-610」。ここで信頼性クラスを分ける焦点となるのが、スルーホール内の「垂直充填率(バレル充填率)」です。

垂直充填率(英語では「Vertical Fill」または「Barrel Fill」)とは、スルーホール挿入部品のはんだ付けにおいて、プリント基板のめっきスルーホール(バレル)内部が、はんだによって垂直方向にどの程度満たされているかを示す割合のことです。

 

▽ 定義と測定方法

測定の方向
はんだが供給される側(ソース面:通常は基板のボトム面)から、はんだが流れ込む反対側(デスティネーション面:通常は部品面)に向かって、バレル内をどれだけはんだが満たしているかを測定します。

連続性
充填は連続している必要があり、ソース側とはんだ上がり側の間に空洞(ボイド)があってはなりません。

 

▽ IPC規格の性質

IPC-A-610は「目視検査基準」であり、完成した接合部が物理的に健全な構造(形状)をしているかを評価するものです。この規格は、電気的な性能試験の結果によって物理的な外観基準を上書き(免除)することを認めていません。

したがって、製造現場で電気的な導通が確認できたとしても、規定の充填率を満たしていない場合は不合格(手直しが必要な「欠陥」)として扱われます。また、規格の範囲内であっても目標状態から偏りがある場合は、「プロセスインジケータ(工程に異常の芽があることを示すシグナル)」として記録し、工程へフィードバックすることが求められます。

※ プロセスインジケータとは、製品の機能・信頼性には影響しないため手直し(リワーク)は不要(合格)ですが、製造工程になんらかの変動や偏り(不具合の前兆)が発生していることを示す外観状態のことです。

 

2. IPC-A-610におけるクラス別基準

国際的な品質基準であるIPC-A-610では、製品の信頼性クラスに応じて以下のような厳格な受入基準が設けられています。

IPC クラス1(一般用電子機器):
寿命や信頼性が決定的な要因とならない製品向け。電気的導通と最低限の機械的接合が維持されていれば良品とされ、垂直充填率の数値的な受入基準は設定されていません。

IPC クラス2(専用サービス機器:通信、産業機器):
垂直方向の最小はんだ充填は原則75%。ただし、14リード以上の多ピン部品や、熱容量の大きいサーマルプレーン接続(※)がある場合は、例外的に50%(あるいは1.2mmのどちらか小さい方)まで許容される規定があります。

※ サーマルプレーン接続とは、基板上にある広大な銅箔層(電源・グランド・放熱用)に、部品の穴(スルーホール)が電気的・熱的に接続されている構造のことです。

IPC クラス3(高信頼性製品:医療、宇宙航空、車載安全装置):
製品が故障した場合、人命に関わったり、重大な経済的損失を招いたりする「ミッションクリティカル」が該当するクラス3では、垂直方向の最小はんだ充填は例外なく「75%」が厳格に求められます。

 
 

視点 2:基板ベーキング「温度と時間」の物理的最適化

 

基板の吸湿は、はんだ付け品質における「サイレントキラー」です。基板内部に水分が残留したまま250℃前後の溶融はんだにさらされると、水分は瞬時に気化・急膨張(体積が約1,700倍に増加)し、逃げ場を失って爆発的に噴出します。これが「ブローホール(噴孔)」や「ピンホール」の真因です。

ここで重要なのが、基板ベーキング温度の最適化です。業界標準では、以下の条件が推奨されています。

 

1. 条件別のベーキング推奨基準

基板の状態に応じて、以下の条件で焼成(ベーキング)を行います。

 

 

標準的な保管条件とベーキング推奨基準
1)保管期間 2〜6ヶ月:120±5℃で2時間
2)保管期間 6〜12ヶ月:120±5℃で4時間
3開梱後5日以上の放置(30℃ / 60% RH以下):120±5℃で1時間の再ベーキング

ただし、基板が多層・高密度である場合は、酸化や損傷のリスクを低減するために 105±5℃でのマイルドベーキングを検討することもあります。

多層・高密度基板
基板が多層・高密度である場合は、水の標準沸点(約99.97℃)の直上である105℃前後で時間をかけて除湿するマイルドベーキングを検討します。120℃での急激な加熱は、基板内部で水分が急膨張して層間剥離(デラミネーション)を引き起こしたり、スルーホールパッドを酸化させたりするリスクがあるためです。

物理的破壊のリスク
120℃での急激な加熱は、基板内部の水分を一気に気化・膨張(水蒸気爆発)させ、層間剥離やビアの破断といった致命的な損傷を引き起こす恐れがあります。

酸化のメカニズム
高温加熱は化学反応を加速させるだけでなく、表面処理(フィニッシュ)の劣化や拡散を招きます。具体的には、OSP(有機皮膜)の熱分解による銅の露出や、ENIG(金めっき)における下地ニッケルが表面へ移動する「拡散効果」が、パッドの酸化を促進する直接の原因となります。

ベーキングは単なる乾燥作業ではありません。水蒸気による物理的なビア破壊を防ぎ、長期的な絶縁信頼性を守るための不可欠な工程なのです。

 
 

視点 3:断面観察(クロスセクション)による不具合の因果鎖断ち

 

外観検査(AOI)やX線検査で「合格」と判定されても、内部に不具合の原因が潜んでいることがあります。上流工程からの因果関係を解明する唯一の手段が「断面観察」です。

 

 

例えば、頻発するブローホールの真因が、はんだ付け工程ではなく、上流の「基板製造時のドリル加工」にあるケースは非常に多いのです。ドリルの寿命管理不足による樹脂の「むしれ」や「切削痕」は、スルーホール壁面のめっきを不均一にし、局所的な薄膜箇所を作ります。その箇所(薄いめっき)を突き破ってガスが噴出するのです。

 

 

ドリル加工時に生じた樹脂の「むしれ」。この微細な損傷隙間に残留した水分や空気は、加熱時にデラミネーション(層間剥離)を引き起こすだけでなく、将来的にCAF(導電性陽極フィラメント)の成長を促進し、目に見えない内部ショートを招くリスクがあります。

1ドリル刃の摩耗
ドリル刃の摩耗(寿命)管理不足により、スルーホール内壁のガラスエポキシ樹脂が綺麗に切削されず、ちぎれたような「むしれ」やガラス繊維のほつれが生じる。

2めっきの不均一
むしれによる複雑な凹凸(アンダーカット・隙間)に対し、めっき液が均一に回り込まず、めっき膜厚の極端な薄肉化や局所的なピンホールが発生する。

3ガス噴出して欠陥化
はんだ付け時の急速加熱(250℃前後)により、むしれの隙間に閉じ込められていた湿気・空気の蒸気圧が急激に高まり、薄いめっきを突き破って吹き出す(ブローホール/ボイドの形成)。

4長期信頼性の低下(市場故障リスク):
はんだ付け時にブローホールとして表面化・検出されなかった場合でも、微細な損傷隙間に残留した湿気は、製品の稼働(通電)時にCAF(導電性陽極フィラメント)の成長を促進し、最終的にアノード(陽極・プラス)・カソード(陰極・マイナス)間、または隣接ホール間で絶縁破壊(内部ショート)に至る。

 

断面観察における重点チェック項目

めっき厚の均一性
切削痕による局所的な薄めっきがないか。

樹脂のむしれ状態
ドリル加工の品位がガスの抜け道を作っていないか。

IMC(金属間化合物)
はんだと母材銅箔の間に、健全な合金層が均一に形成されているか。

「上流工程(ドリル加工)の課題が、最終的なはんだ品質として現れる」というサプライチェーン全体を俯瞰する視点こそが、品質管理者に求められる素養です。

 
 

視点 3断面観察(クロスセクション)による不具合の因果鎖断ち」の内容をさらに深く理解するために、ぜひ以下の記事もご覧ください。関連するトピックや補足情報、より包括的な知識を掲載しております。

基板実装における品質向上:ブローホール・ピンホールの根本原因と改善提案

ブローホール・ピンホールの原因となる基板穴加工の切削痕を解説。はんだ付け時のガス発生メカニズムから、ドリル加工工程への遡及調査、断面観察による検証まで、実装品質を根本から改善する具体的な手法を紹介します。製品の信頼性向上に寄与する製造現場の視点を共有します。

 

 
 

視点 4:はんだ噴流高さ(ジェットハイト)の「1.6mm」定量管理

 

ウェーブ(フロー)はんだ付けの熱伝達量は、はんだ噴流(ジェット)と基板との「接触面積」によって決まります。

はんだ噴流の高さのわずかな変動が加熱性能を劇的に変えることは、数多くの技術論文でも検証され、また当社の技術者の試行錯誤からも見えます。

 

1. わずか1.6mmの下落が引き起こす加熱ロス

設定上限:はんだがスルーホールから基板上面へ溢れ出ない限界値。
設定下限:上限から約1.6mm(基板1枚分の厚み)下げた状態。

はんだ噴流がスルーホールを通じて基板上面へ湧き上がらない限界の「設定上限」から、基板厚とほぼ同じ約1.6mmだけ噴流高さを下げた「設定下限」の状態にするだけで、噴流と基板との接触面積が減少し(局所的な接触となり)、はんだ付け時間中に加熱ロスが発生します。

 

 

加熱が不十分だと、スルーホール内をはんだで満たすことができず、接合強度の低下を招きます。特に高熱容量基板(厚い銅箔や多層構造)における加熱量の減少は、正常な接合と致命的な未はんだを分ける決定的な差となります。

 

2. ドロスと摩耗への対策

現場でこのわずか1.6mmの管理幅を維持するのが難しい理由は、はんだ槽内に蓄積するドロス(酸化物)やポンプの経年摩耗です。噴流の高さは、槽内に生じるドロス(酸化物)の詰まりやポンプの経年摩耗によって刻々と低下します。ベテランの「勘」による目視確認に頼るのではなく、以下の定量的アプローチで管理する必要があります。

・ガラス基板による接触幅の視覚的確認(定期観測)
・自動センシング機構による噴流高さの数値モニタリング

 
 

視点 5:「部品配置とパターン設計」で直行率を最大化する

 

ウェーブはんだ付け(フロー工程)における「部品の向き」は、直行率を左右する重要な要素です。設計段階でのわずかな配慮不足が、現場ではブリッジや未はんだ(はんだスキップ)といった致命的な欠陥を招き、修正コストを増大させます。

 

1. 多ピンコネクタ:搬送方向に対して「平行配置」

長尺の多ピンコネクタなどを配置する場合、ピンの並ぶ方向をはんだ槽の搬送(進行)方向に対して「平行(同じ向き)」に配置するのが原則です。

ブリッジの防止
部品を進行方向に対して「垂直(横向き)」に配置してしまうと、すべてのピン列が同時に波(噴流)から抜けることになります。この際、隣り合うピン間ではんだが切れにくくなり、ブリッジが多発します。

はんだの抜けとガス排出
平行に配置することで、ピンが前方から順にスムーズにはんだ波から抜けて(離脱して)いきます。これにより、フラックスから発生するガスの排出がスムーズになり、はんだの「抜け」も劇的に改善されます。

 

2. チップ部品(裏面仮止め):部品の長手方向を搬送方向に対して「垂直(直角)配置」

プリント基板の裏面に仮止めされたチップ部品(表面実装部品)の場合、コネクタとは異なるセオリーが適用されます。

未はんだの回避
部品の長手方向(両端の電極を結ぶ線)を進行方向に対して「垂直(直角)」に配置することで、左右の電極が同時に噴流(はんだ波)へ進入・離脱します。これにより、部品本体が波を遮る「シャドーイング(影)効果」が起きにくくなり、未はんだ(はんだスキップ)を防止できます。

フラックスの発散
逆に、部品の長手方向を進行方向に対して「平行(水平)」に配置してしまうと、フラックスのガスが滞留しやすく、はんだが電極に接触するのを妨げて「未はんだ(はんだスキップ)」を誘発しやすくなります。

 

3. ダミーパッド(はんだ泥棒)の設置

部品配置の向きを最適化した上で、さらに直行率を高める手法が「はんだ泥棒」の設置です。

表面張力の利用
進行方向の「最後のピン」には余剰なはんだが溜まりやすく、ブリッジの原因となります。そのため、ピン列の最後尾に非機能的なパッド(はんだ泥棒)を設計段階で追加します。

コスト削減効果
このダミーパッドが「磁石のように」余剰はんだを引き寄せて引き剥がす役割を果たします。現場で顕微鏡を覗きながら手作業でブリッジを修正するコスト(時間・手間)は、設計でダミーパッドを1つ追加するコストの何倍にも達するため、非常に有効なDFM(製造考慮設計)と言えます。

 

4. フローパレット(治具)での角度補完

基板設計だけで対応しきれない場合、フローパレット(はんだ付け治具)側での工夫も行われます。

角度の最適化
パレット内で基板を15〜30度傾けて配置することで、特定のピンが「最後尾」になるように調整し、ブリッジのリスクを軽減する手法があります。これは、コネクタがどうしても噴流の方向に平行に配置できない場合に役立ちます。

 
 

まとめ:手直しゼロを実現する「5つの視点」の総括

 

ウェーブはんだ付け(フロー工程)における品質向上とリワークコスト削減を実現するには、単なるはんだ槽の設定管理(部分最適)にとどまらず、設計・材料・工程管理を一体とした包括的なアプローチ(全体最適)が不可欠です。

 

本記事で解説した「5つの視点」の要点を整理します。

1.【規格基準の遵守】IPC-A-610に基づく充填率管理

・導通の有無に関わらず、規定の垂直充填率(基本75%以上)を厳守し、接合部の物理的強度を維持する。

 

2.【基板の前処理】物理現象に基づいたベーキング処理

・水分の急膨張(約1,700倍)によるブローホールを防ぐため、120℃標準乾燥や105℃マイルドベーキングを正しく選択する。

 

3.【不具合の原因究明】断面観察による上流工程への遡及

・ドリル加工による「樹脂のむしれ」や「めっきの薄肉化」など、最終品質に影を落とす基板製造段階の課題を解明する。

 

4.【パラメーターの定量化】噴流高さ(1.6mm)の自動・定量的管理

・熱伝達量を決定づける噴流高さをガラス基板やセンサーで管理し、経年摩耗やドロスによる加熱不足(未はんだ)を防ぐ。

 

5.【DFM設計の徹底】部品配置とダミーパッドによる直行率向上

・多ピンコネクタの平行配置、チップ部品の垂直配置、はんだ泥棒(ダミーパッド)の追加により、ブリッジ発生を未然に遮断する。

実装現場における高い品質と安定した直行率は、作業者の勘や経験ではなく、規格への正しい理解と物理的メカニズムに基づいた「定量管理」によって構築されます。

 

 

設計・品質保証・製造の各部門が連携し、これらの視点を製造フローへ落とし込むことで、後工程の手直しコストを削減し、長期信頼性に優れたプリント基板の製造につながります。

 
 


 

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